古い不動産物件にはアスベスト(石綿)の知識が不可欠になる

不動産投資

築年数が古い物件を扱う時に、最近、よく出てくる問題がアスベスト(石綿)の処理です。

アスベストが発生する古い建物の現場は、除去に手間と予算がかかるなど厄介です。

 

物件売買や仲介が主な仕事である宅建士には、そんな建築のアスベストの問題は、仕事には関係ないと思う人がいるかもしれません。

 

しかし、最近の買主や借り手は、アスベストなどの健康被害にとても敏感です。

適切な処置がされていない不動産物件は誰も買わないし借りたくもありません。

 

また、古い建物を綺麗に改装や建替えをして、再度売り出そうとすれば、改装にかかる建築費も全て販売価格に加算する必要があります。

アスベストの解体費用が当初の予算を大幅にオーバーした為に、全体の改装費が高くなってしまった現場は幾らでもあります。

 

今、日本では、高度成長期に大量に建築された築40年以上の物件が、建替えの時期に差し掛かっています。

宅建士の不動産売買や賃貸仲介でもアスベストが発生する不動産物件が、今後増える可能性があります。

 

そんなアスベストが含有されている物件を扱う場合は、どうすれば良いか?

建築の施工会社に任せきりにせずに、宅建士もアスベストについて知っていると仕事に役立ちます。

アスベストのミニ知識が得られる記事なので、読んでみてください。

アスベスト(石綿)とは

アスベスト(石綿)は、肉眼では見ることができない繊維素材で、ヒトの髪の毛の直径(40μm~100μm※1)よりも非常に細いです。

また、石綿は熱、摩擦、酸やアルカリにも強いだけでなく耐久性もあります。

 

さらに燃えにくく、電気も通しにくく、均一に混ざりやすく品質が一定しています。

特にセメントとは相性がよいです。

 

とても便利な素材なので、建材、摩擦材、シール断熱材などの様々な工業製品に使用されてきました。

その中で最も多いのが建築物件での使用です。

日本のアスベストの約8割が建材に使用されていると言われています。

 

しかし、現在の日本では、含有率が0.1%を超える石綿(アスベスト)は原則として製造・使用等が一切禁止されています。

 

アスベストは、飛散すると空気中に浮遊します。

人が長期間にわたり、その石綿繊維を大量に吸入すると肺内に蓄積します。

そして15年~40年の潜伏期間を経て、肺がんや悪性中皮腫などの病気が発症する可能性があると知られています。

WHOの報告などで、その「発がん性の問題」が指摘されています。

【アスベストの種類】

アスベストは3種類あり、種類によって「発がん性」の強さが変わります。

【アスベストの種類】

名称 直径 発がん性
クリソタイル(白石綿) 0.02-0.08μm
アモサイト(茶石綿) 0.06-0.35μm
クロシドライト(青石綿) 0.04-0.15μm

一番よく使用されているのが、世界でも使用が9割以上を占める白石綿です。

 

 

 

 

 

(引用:「環境再生保全機構」より)

吹付材料には、青石綿や茶石綿など発がん性が高いものが使われています。

一般的に吹付材の方が、成形板に加工されたスレート材料に比べて、飛散する危険性も高いので、除去費用は高くなります。

アスベストの含有建材とは

一般的にアスベスト言えば、吹付け材だけを連想する人も多いですが、アスベストに指定される材料は、3種類があります。

 

これは、石綿の粉塵の発生量に応じたばく露防止対策が、レベルごとに決定されています。

危険度によってレベル1〜3に分類され、石綿が含有された建築材料等を使用した建築物の解体の作業内容は、下記で判断します。

【アスベストの種類】

名称 危険度 種類

 

レベル1

吹付け材

発じん性の著しく高い作業

吹付け材

・吹付け石綿

・石綿含有吹付けロックウール

・湿式石綿含有吹付け材

・石綿含有吹付けバーミキュライト

・石綿含有吹付けパーライト

レベル2

保温材

耐火被覆材

断熱材

 

発じん性の高い作業

保温材(配管エルボ、ボイラー等)

・石綿含有けいそう土保温材

・石綿含有けい酸カルシウム保温材

・石綿含有バーミキュライト保温材

・石綿含有パーライト保温材

・石綿保温材

耐火被覆材 (S造の梁・柱等)】

・石綿含有けい酸カルシウム板第2種

・石綿含有耐火被覆板

断熱材

・屋根用折板石綿断熱材

・煙突用石綿断熱材

レベル3

その他石綿含有建材

発じん性が比較的低い作業

内装材 (壁・天井)

石綿含有スレートボード(フレキシブル板 、平板、軟質板、軟質フレキジブル板、その他)

石綿含有スラグせっこう板

・石綿含有パルプセメント板

・石綿含有けい酸カルシウム板第1種

・石綿含有ロックウール吸音天井板

・石綿含有せっこうボード

・石綿含有パーライト板

・石綿含有その他パネル・ボード

・石綿含有壁紙

耐火間仕切

・石綿含有けい酸カルシウム板第1種

床材

・石綿含有ビニル床タイル

・石綿含有ビニル床シート

石綿含有ソフト巾木

外装材(外壁・軒天)

・石綿含有窯業系サイディング

・石綿含有建材複合金属系サイディング

・石綿含有押出成形セメント板

・石綿含有けい酸カルシウム板第1種

・石綿含有スレードボード・フレキシブル板

(参照:「目で見るアスベスト建材 – 国土交通省」)

アスベスト(石綿)の法令上の規制

アスベスト(石綿)は、飛散すると著しい健康被害をもたらすとして、衛生上有害な物質として定められています。

建築物件でアスベストが使用されている事が判明すれば、適切な処置が義務付けられています。

 

しかし、石綿は存在するだけで直ちに問題になる材料ではなく、飛び散ること、吸い込むこと自体が問題となります。

労働安全衛生法」、「大気汚染防止法」や「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」などでも予防や飛散防止等が定められています。

 

今回は主に不動産物件とも関わりが深い「建築基準法」を紹介します。

建築基準法のアスベストの規制

平成18年に建築基準法が改正され、建築基準法第28条でも、石綿の飛散のおそれのある建築材料の使用は制限されています。

 

吹付けアスベストとアスベスト含有吹付けロックウール(含有率が0.1%を超えるもの)が規制対象となり、新たに建築する建築物への使用が禁止になりました。

 

また、平成18年以前に建築された建築物においても、増改築等を行う場合は除去等(一定規模以下の場合は封じ込め又は囲い込みを許容)が必要となります

建築物だけでなく、門・塀・電柱・トンネルなど人工的に製作し設置された建造物等の工作物も対象になります。

  【規制の内容】

①増改築時における除去等を義務づけ

②石綿の飛散のおそれのある場合に勧告・命令等を実施

報告聴取・立入検査を実施

定期報告制度による閲覧の実施

建物は実際に住人が使うので健康被害への危険性が高いです。

よって建築基準法でも厳しく規制が定められています。

緩和措置

増改築時には、原則として石綿の除去を義務づけられますが、緩和措置もあります。

 

増改築部分の床面積が増改築前の床面積の1/2を超えない場合は、増改築部分以外の部分については、封じ込めや囲い込みの措置でも許されます。

また、大規模修繕・模様替の場合には、対象部分以外については、封じ込めや囲い込みの措置でも許容されます。

(引用:国土交通省「建築基準法による石綿規制の概要」より)

石綿(アスベスト)の調査方法と作業

石綿が含有されている建築材料が成功されているかを調査するのはとても重要です。

アスベストの含有状況の把握は、石綿のばく露防止対策には必要です。

【事前調査】

名称 調査内容
第一次スクリーニング 書面による調査
第二次スクリーニング (現場調査および分析のための試料採取を含む)
および分析調査(分析機関による)

【石綿がある場合の現場作業】

「石綿障害予防規則」で規定されている作業は以下になります。

(ア) 解体等の作業(レベル1〜3の除去作業
(イ) 石綿含有吹付け材、石綿含有保温材等の封じ込め、囲い込み作業
(ウ) その他の作業(小規模な修繕点検等)

アスベスト使用を見分ける方法

古い物件になれば確認申請や竣工図が残っていない現場も多いです。

実際、どこのメーカーの材料を使用したか?までを目視だけで見分けるのは、ほぼ不可能です。

 

メーカー名が判別できない場合は、目視だけでなく石綿の商品が製造された期間で判断しています。

アスベスト含有吹付け材が「規制された年代」、「物件の建築年次」と「使用の用途」などにより、含有の可能性があるか?までは予測できます。

材料の商品名で見分ける方法

アスベストが含有された製品を製造メーカーで判断する方法があります。

「石綿含有建築材料商品名」の一覧が一般に公表されています。

ここには、日本で出荷された、ほぼ全てのアスベスト製品の製造開始と終了の年月日が記載されています。

もし、この期間内で建築された建築物件に該当すれば、アスベストが使用された可能性は否定できません。

 

また、建築物件を建てた時期が、製造開始と終了後の期間内に該当していなくても注意が必要です。

製造中止の時期以降でも、2年程度は在庫品が使用された可能性があるからです。

施工部位と使用目的で判断する場合

使用される箇所によって、どのようなアスベストを使用しているか判断する方法もあります。

下記は「一般住宅」と「共同住宅」の事例です。

【一般住宅】

一般住宅は平屋および2階建ての住居で、内外装に使用されていることが多いです。

防火材料としてだけでなく、断熱の処理が必要な水廻り部分にも多く使用されています。

 

表4-2 施工部位と使用目的別の石綿含有建築材料の関係

(引用画像「石綿含有建築材料の使用実態」より)

【共同住宅】

S造で建築されているアパート、マンションなどの共同住宅は、鉄骨等の耐火被覆材用に石綿含有建築材料が用いられている事が多いです。

他にも防火材料として内外装材に断熱・吸音・化粧用に使用されています。

 

表4-3 施工部位と使用目的別の石綿含有建築材料の関係

(引用画像「石綿含有建築材料の使用実態」より)

https://www.env.go.jp/air/asbestos/commi_td/05/mat03_1.pdf

危険な吹付材が多く施工された年次

吹付石綿は昭和30年~49年の約19年間に主に使用されました。

よって、この時期に建設された建物は要注意です。

下記は日本で使用された「石綿含有吹付け材の施工面積(千㎡)の調査結果」です。

吹付け石綿が多く使用された時期

(引用画像「石綿含有建築材料の使用実態」より)

 

吹付材は昭和35年頃から、使用が年々増加しました。

昭和30年度の施工面積は255(千㎡)でしたが、最も多く使用された昭和47年には、20,987(千㎡)です。

当初に比べて約82倍もの急激な増加は、高度成長期とも重なっています。

この時期は、住宅やマンションだけでなく、ビルや商業施設など多くの建物が建築されました。

 

47年度をピークに製造中止になる昭和49年度は使用が47年度から半減しましたが、9,617(千㎡)も使用されていました。

 

ある施工会社の人から「古い建物(昭和30年〜50年度頃に新築)は、アスベスト含有に無関係な建物はほとんどない」と聞いたことがあります。

この言葉は本当かもしれません。

吹付けロックウールが多く使用された時期

また建築基準法では、アスベストの含有が重量の0.1%を超える吹付けロックウールの使用を禁止しています。

ロックウールとは、建築物の断熱材や吸音材などに広く用いられる材料です。

アスベストが含有されたロックウールが多く使用された時期もありました。

(引用画像「石綿含有建築材料の使用実態」より)

アスベストを除去する方法

アスベストは専門の業者でなければ除去できません。

国土交通省では、アスベストの現地調査も専門家に依頼することが推奨されています。

大気汚染防止法、石綿障害予防規則に基づくアスベストの使用の有無の「事前調査」を行わせるべき者については、厚生労働省労働基準局長通達(平成26年4月23日基発0423第7号)において、「建築物石綿含有建材調査者、石綿作業主任者技能講習修了者のうち石綿等の除去等の作業の経験を有する者及び日本アスベスト調査診断協会に登録された者」など石綿に関し一定の知見を有し、的確な判断ができる者が調査を行うこととされています。

(引用:国土交通省「アスベストQ&A」より)

もし、アスベストが含有されている可能性が高い場合は、資料が残っていれば、最初に設計図書(建築時の施工図・材料表等)で確認します。

 

図面の入手方法は、建物の持ち主が図面を保存していない時は、業者に問い合わせます。

建築物を実際に施工した建設業者又は工務店、また分譲住宅等を販売した宅建業者であれば、図面を持っている場合もあります。

しかし、通常、業者には図面や資料を一定期間、保存義務がありますが、古い年次までは残っていない事も多いです。

 

さらに、竣工図の建築図書であってもアスベストの使用が記載されていない場合もあります。

また、後の増築工事や修繕工事などで、アスベスト含有の材料を使用した可能性も残ります。

よって、疑いがあるときは、必ず現地調査を行います。

 

現地調査については、国土交通省の「アスベストQ&A」に詳しい情報は掲載されています。

http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/Q&A/index.html#a24

 

また、府や市の公式ページにも、「アスベストに関する測定可能な事業所一覧」が掲載されています。

アスベスト専門の調査会社を探している人は、府や市に問い合わせてみてください。

 

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